1.RPP広告に起こっている異変とは
2024年6月から楽天市場は、従来のキーワードベースの検索からセマンティック検索への移行が行われ、より関連性の高いRPP広告が表示されるようになりました。この変化により、RPP広告の予算消化が予期せぬ形で加速するケースが増加しています。また、RPP広告のパフォーマンスに影響が出ており、特定のキーワードにおけるコンバージョン率が低下するケースも見受けられます。
本記事では、このような楽天市場でのRPP広告運用での異変が発生している原因とその対策方法について詳しく解説します。
1)RPP広告に影響を与えているセマンティック検索とは?
セマンティック検索は、従来のキーワードマッチングに依存せず、AIを活用してユーザーの意図をより正確に捉える楽天市場での新しい検索技術です。この技術により、単なるキーワードの一致ではなく、より広い関連性を持つ結果も表示されます。例えば、「足が痛くならない靴」という具体的なキーワードを入力しなくても、「靴」に関連する情報が表示されます。このセマンティック検索により、ユーザーは必要な情報に効率的にアクセスできるようになります。
しかし、この楽天市場での新しい検索仕様がRPP広告の予算に影響を与えています。これまでのキーワードマッチングに基づく予算設定では、具体的なキーワードに対する入札が容易でしたが、セマンティック検索の導入により、広範な関連キーワードに対する入札が必要となり、予算管理が複雑化しました。これにより、RPP広告のコストが増加し、予算の再評価が求められる状況となっています。
2)従来の楽天市場のRPP広告の検索ロジック
従来の楽天市場のRPP広告の検索アルゴリズムには、いくつかの特性がありました。
・キーワードが完全に一致していないとRPP広告が表示されない仕様
ユーザーが検索する際に、設定したキーワードとユーザーの検索クエリが完全に一致していなければ、検索結果にRPP広告が表示されない仕様でした。このため、EC運用担当者はユーザーの検索意図に合致した広告を表示できるようにするためにキーワード選定に非常に慎重になる必要がありました。
・ユーザーが検索する際もキーワードは単語ごとになっていた
ユーザーは検索クエリを単語ごとに区切って入力することが多く、例えば「新しいスマートフォン」と一括りに検索するのではなく、「新しい」「スマートフォン」といった形で個別に検索することが一般的でした。このような検索行動に対応するために、EC運用担当者は異なる組み合わせのキーワードを多く設定する必要がありました。この結果、キーワードの管理が煩雑になり、広告運用の手間が増えることとなりました。
これらの理由から、従来のRPP広告の運用には高度なユーザー行動の分析が不可欠でした。EC運用担当者はユーザーがどのようなキーワードで検索するのかを詳細に分析し、適切なキーワードを選定することで、より効果的なRPP広告の配信を目指していました。つまり、ユーザーの検索行動を深く理解し、その検索意図に応じたキーワードを設定することが重要でした。
2.RPP広告の検索ロジック変更による影響と原因
1)RPP広告のキーワード検索に大きな影響あり!
RPP広告のキーワード検索で、競合他社の商品名での露出が増える現象が起こっています。
この現象は、自然検索では表示されない商品やブランドが、広告としてユーザーに届くことによって引き起こされます。例えば、Appleの商品を検索した際に、Ankerの広告が表示されるケースがあります。また、特定のイヤホンブランド名で検索すると、別のイヤホンブランドの広告が上位に表示されることもあります。このように、競合他社の商品名をターゲットにした広告戦略は、ユーザーの購買行動に大きな影響を与えています。
2)なぜこのような事象が起きているのか?
RPP広告の運用で商品CPC(クリック単価)を過度に引き上げたことが、今回のような事例が増える原因となっています。
セマンティック検索は、ユーザーの意図をより的確に把握し、関連性の高い検索結果を提供する技術です。そのため、ユーザーが類似の競合商品を検索すると、自社の商品が表示されることがあります。
指名検索のユーザーは、すでに特定の商品を購入する意向が強いため、高額なクリック単価(CPC)を設定して広告を表示する必要はあまりありません。このようなユーザーに対して過剰に広告を出しても、既に購入意思が固まっているため、無駄な広告費用が発生するだけでなく、広告の効果も限定的です。
3.RPP広告の検索ロジック変更に対する店舗の対応
前提として楽天市場のRPPの目的は、特定のキーワードに対するSEO順位を上げ、オーガニック検索でも商品が売れるようにすることです。
こちらを踏まえたうえで、今回の事象の対応方法をご紹介いたします。
<対応した方が良い4つのこと>
1)商品CPCを上げ過ぎないように設定に注意する
商品CPC(クリック単価)を過度に引き上げることで、ユーザーが類似の競合商品を検索すると、自社の商品が表示されてしまっているため、商品CPCは上げすぎず、キーワードCPCを上げて運用をしましょう。高すぎるCPC設定は無駄な広告表示を引き起こし、コストの無駄遣いとなる可能性があります。キーワードCPCを上げて運用することで、予算を効率的に利用し、効果的な広告運用を行うことができます。特に、RPP広告では除外キーワードの設定ができないため、運用者側の工夫が求められます。
2)日別の予算を毎日確認する(商品別レポート)
今回の事象が起きていることを発見するためには日別の予算を毎日確認することが必要です。
特定の商品が日予算の大部分を消費してしまっていた場合は、今回の事象が起こっている可能性が高いです。
今回の事象が原因の場合は商品CPCを下げて、競合商品のキーワードではRPP広告が出ないように調整を行うことで、効果的な予算管理が可能になります。定期的なレポート確認を通じて、無駄なコストを削減し、効率的な運用を目指しましょう。
3)RPP広告でキーワード入稿をする
商品ごとにCPC(クリック単価)を設定するのではなく、狙いたいキーワードに集中して予算を投下することで、効果的な広告運用を可能にします。これにより、広告費を効率的に活用し、ターゲットとするユーザーに確実にリーチすることが期待できます。
4)プロ(楽天運用代行会社)に任せるか広告予算を管理する人を用意する
RPP広告の運用には専門的な知識と経験が必要です。そのため、プロに任せるという選択肢があります。広告運用の専門家に任せることで、最新のノウハウや戦略を活用し、効果的な運用が可能になります。また、専門家に任せることで、運用にかかる時間と労力を節約でき、本業に集中することができます。
以上の4つのポイントを押さえることで、RPP広告を効果的に運用し、特定のキーワードに対するSEO順位を上げ、オーガニック検索でも商品が売れるようにすることができます。適切なCPC設定や予算管理、キーワード選定、そして専門家の活用を通じて、最大限の広告効果を実現しましょう。
4.今回の事象を「プラス」に捉えることもできます!
上記のようにセマンティック検索技術の進化により、現状では悪影響も見られますが、一方で多くのポジティブな効果も期待されています。以下にその具体的な例をいくつか挙げます。
1)競合より優れた商品を持つ場合、競合のキーワードでの露出が有利になる可能性もある
競合他社より優れた商品を提供している場合、セマンティック検索を活用することで、新たな顧客獲得の機会が広がります。競合のキーワードを使用することで、競合製品を探しているユーザーにも自社商品を見つけてもらいやすくなり、競合より優れた商品を持っているため、検索結果で有利に立つことができます。この戦略により、従来の顧客だけでなく、競合他社の顧客にもアプローチできるようになり、市場シェアの拡大が期待できます。
2)低いCPCでより広い面をとることができ楽天市場内での売上アップに繋がる可能性もある
セマンティック検索は、従来のキーワード検索に比べて、広告費用(CPC)を抑えつつ、広範囲にリーチすることが可能です。楽天市場などの大手ECサイトでは、セマンティック検索を導入することで、広告コストを最適化しながら、より多くの潜在顧客に商品をアピールすることができます。この結果、効率的な広告運用が実現し、売上の増加に繋がることが期待されます。
3)ユーザーが商品をより簡単に見つけることができる
競合他社のキーワードを使用して広告を出すことで、ユーザーが自社商品を知らなくても目にする機会が増え、これまで気づかなかった商品を発見しやすくなります。さらに、ユーザーは検索の手間を省けるため、効率的に商品を探すことができ、ショッピング体験がより良くなります。
4)アクセスを集めやすくなった
セマンティック検索の技術は、単純なキーワードマッチングに依存せず、文脈を理解して関連する情報を提供するため、検索結果に表示される機会が増えます。これにより、自社商品へのアクセスが増加しやすくなります。特に、長尾キーワードや会話的な検索クエリにも対応できるため、多様なユーザー層からのアクセスを集めることができます。結果として、サイト全体のトラフィックが増加し、コンバージョン率の向上にも寄与するでしょう。
しかし、Amazonでは競合のキーワードで出品するのが一般的であり、流入しているキーワードを考慮するとコンバージョン率も向上する可能性があります。
まとめ
RPP広告の効率を最大限に高めるためには、セマンティック検索の影響をしっかりと理解し、これを踏まえた戦略的な広告運用が必要です。具体的には、検索エンジンがどのようにコンテンツを解釈し、関連性の高い広告を表示するかを把握することで、ターゲットに適した広告を効果的に配信できます。専門的な知識が求められるため、必要に応じて広告運用の専門家やコンサルタントに相談し、最適な広告戦略を構築することをお勧めします。
ベイクロスマーケティングでは、RPP広告だけでなく、楽天市場のトータルで店舗運用をサポートしています。売上向上や広告運用に関する総合的な相談も承りますので、お気軽にお問い合わせください。
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