~AIに“任せる”からAIを“活かす”へ~
EC業界ではいま、広告運用の分野にもAI活用の波が広がっています。
入札調整や配信最適化といった煩雑な作業をAIが担うことで、効率的かつスピーディな運用が可能になりつつあります。
この流れを受け、楽天市場が提供する「RPP広告(運用型検索広告)」にも
AIによる自動最適化機能が導入されました。
AIが入札単価を自動的に調整し、広告効果を最適化する仕組みです。
現在は従来の「手動運用」と「自動最適化」を併用できる移行期間が設けられていますが、
2025年10月末までは従来の「手動運用」と「自動最適化」を併用できる移行期間が設けられていましたが、11月から自動最適化への完全移行が実施されました。
今後は、多くの店舗にとって「AIが自動で入札を調整する」ことが前提の運用体制へと切り替わっていく見込みです。
こうした変化により、広告運用の省力化やパフォーマンス向上が期待される一方で、
導入後には「クリック数は増えたが売上が安定しない」「ROASの変動が大きくなった」といった声も見られます。
AIの導入は便利な反面、従来の手動運用とは異なる成果の出方や傾向をもたらすこともあります。
本コラムでは、この自動最適化がもたらす構造的な影響と、
“AIによる最適化に任せる”ではなく“AIを活かす”ための運用のあり方を考察します。
自動最適化の仕組みと盲点
自動最適化では、AIが過去のパフォーマンスデータをもとに「効果的」と判断した出面(掲載枠やユーザー単位)で入札を調整します。
その際、CTR・CVRなど含む複数の反応指標が評価対象になると考えられますが、クリック課金というRPP広告の特性上、CTRなどのクリック反応データが相対的に影響しやすい傾向があります。
CTRは広告の「興味関心」を示す重要な指標であり、本来、購買意欲の高さとも連動する指標となります。
しかし、自動最適化ではCTRの影響度が高まることで、CTRが低い出面はCVRやROASが良好であっても、AIにとっては“効率が低い”と判断され、露出が減ってしまうことがあります。
一方で、CVRが低くてもCTRが高い=クリックされやすい出面には配信が集中しやすく、購買意欲の低いユーザー層や出面への表示が増える傾向もあります。
そのため、購入率(CVR)が高くROASが優れている出面でも、CTRが低い場合には「非効率」と判断され、露出が減少するケースがあります。
一方で、CVRが低くてもCTRが高い=クリックされやすい出面には配信が集中しやすく、購買意欲の低いユーザー層や出面への表示が増える傾向もあります。
結果として、クリック数は増えるもののCVRが低下し、ROASが悪化するという現象が一部の店舗で見られます。
この仕組み自体は、広告プラットフォームとしてはクリックデータを重視する自然な設計です。
ただし、店舗側にとっては「クリックされやすい=売れやすい」とは限らないため、AIの判断を補う視点が重要になります。
また、RPP広告では最低設定CPCが10円から20円へ引き上げられました。
これにより、これまで低単価で効率的に運用できていた商品では、採算バランスが変化しています。
特に利益率が低い商材では、クリック単価の上昇によって広告費が利益を圧迫するリスクも想定されます。
こうした仕様変更も、ROASが安定しない要因のひとつと考えられます。
対策:AIに“任せる”のではなくAIを“活かす”
AIの自動最適化は便利な仕組みですが、完全に任せきるのではなく、人の判断で補完する運用が欠かせません。
以下の3つの取り組みが、RPP広告の自動最適化におけるROAS改善の基本であり、鍵になります。
- CTRを改善する
サムネイルや商品タイトルを見直し、CTRの低い出面でもクリックされやすい工夫を行う。
AIの評価軸に合わせてCTRを底上げすることで、獲得効率の高い出面での露出機会を守る。 - CVRを高める
RPPの表示ロジック上、売上実績も重要な要素。
商品ページの改善やレビュー強化など、購入率を高める取り組みを並行して進める。 - 上限CPCを設定する
商品の利益率をもとに、どこまで入札できるかの“限界CPC”を明確化。
限界が20円前後を下回る商品は、出稿除外を検討するなど柔軟に対応する。
まとめ:AI時代の広告運用に求められるバランス感覚
AIの自動最適化は、膨大なデータをもとに効率を追求できる強力な仕組みです。
しかし、AIが重視するのは“過去データに基づく確率的最適化”であり、
その裏にある「購買意図」や「商品特性」までは読み取れません。
だからこそ、人の知見による補正が必要です。
AIを理解し、戦略的に活かすことで、ROASを安定的に改善することができます。
弊社では、こうしたRPP広告の運用改善・商品ページ最適化・CPC設計支援などを通じて、 AI時代の広告戦略をトータルでサポートしています。
「AIの力を活かし、人の知見で成果を伸ばす」——
それが、これからの広告運用の新しいスタンダードです。
キャプテンECは楽天運用の教育ツールとしても活用されています!
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